顕微鏡写真: 犬猫のKeratocyte

一昨日の夜に残業をしていたところ、絵に描いたように鼻血がツーっと出てきました。あー、この血液もったいないな、血液塗抹を引こうかなと割と本気で考えた自分は正気の沙汰ではないですね。良い子の皆様はティッシュで速やかに止血処置に移りましょう。

さて、今日の顕微鏡写真はKeratocyteです。別名Blister cellですね、Blisterは英語で水ぶくれとか気泡を意味します。早速写真でご覧下さい。赤血球に水ぶくれみたいなのがついているので分かりやすいかもしれません。

イヌ末梢血-Keratocyte、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

少数であれば特に臨床的意義はないとされており、特に猫では健康でもある程度は認められると言われています。逆にこのKeratocyteが多数認められたり、あるいはその他の奇形赤血球とあわせて認められた場合、病気の診断の一助になる可能性もあります。たとえば、以前紹介した破砕赤血球などとあわせて出現していればDICなどの細血管障害が疑われたり、ハインツ小体などとあわせて出現していれば酸化障害が疑われたり、猫では肝リピドーシスなどの肝疾患ではKeratocyteそのものが多数出現することもあるそうです。

ちなみに下に示す血液塗抹は猫のものですが、肝リピドーシスでも、それほど極端に具合が悪い訳でもなかったですが、割とKeratocyteが多かったんですよねぇ、理由は謎です。上述のように、猫だから目についただけなのかもしれません。

ネコ末梢血-Keratocyte、対物レンズ100倍、Diff-Quik染色

このKeratocyte、日本語訳を探すと「有角赤血球」と出てくるのですが、違うような気がするんですよね。だって角がありませんから。Keratocyteの水泡みたいな部分が破裂するとその両端に突起状に角が1本か2本形成されて、名前がBite cellとかって変わったりしますが、この段階まできたら角があるので「有角」赤血球という名前もうなづけます。

ネコ末梢血-Bite cell、対物レンズ100倍、Diff-Quik染色

マスコットキャラクターみたいな角感、出てますよね。まぁ成り立ちを考慮して、Blisterが破裂する前も「有角赤血球」という訳が充てられているのかもしれませんね。

今日の顕微鏡写真は以上です。冒頭で鼻血で血液塗抹を作るべきか悩んだ話をしましたが、なぜその衝動を制御することができたのか。それは、以前指を切ったときに既に自分の血液塗抹を作ったことがあるからです。2枚も要らないよなぁって思ってティッシュを鼻に詰めてました。いま冷静になって文章にしてみると、異常者感がすごい。お巡りさんこっちですー!

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