英論文紹介: DEA1陽性率の犬種によるかたより
自分は雨男でも晴れ男でもないような気がしていますが、頑張って働いた帰り道はいつも晴れていてほしいなと思っています。その思いが強すぎるのか、先月新調した雨具がまだ一度も日の目を見ずにもう夏がそろそろ終わるような気配を感じ始めた今日この頃です。でもゲリラ豪雨は多いですし、土砂災害や河川の増水には皆さまお気を付け下さいませ。
さて、今回紹介するのは犬の最も有名な血液型、犬赤血球抗原(Dog erythrocyte antigen: DEA)の1型、すなわちDEA1に関する論文です。私が編集している日本獣医輸血研究会のサイトもよければご覧下さい。
この血液型がなぜ最も有名かと言うと、犬の血液型の中で最も研究がなされており、院内でも判定できるようなキットが日本国内でも販売されていることが挙げられると思います。そしてなぜそのような研究がなされているかと言えば、この血液型が不適合な状態で輸血を繰り返した場合、輸血で最も回避しなければならない急性溶血性輸血副作用を引き起こして命にかかわる問題となるためです。人の血液型で言えばABO不適合輸血に近いものがありますが、細かい話をすれば犬はDEA1に対する規則性抗体がないので、初回はDEA1を原因とした急性溶血性輸血副作用を起こすことはありません。
ところで少し話はそれますが、この「DEA」という名称、何かすっと頭に入ってこないんですよねぇ。20年ほど前に初めて出会ったときもそうでした。人の血液型と言えば、おなじみのABOやRhがありますが、その他にもMNS、P、Lewis、Kell、Duffy、Kidd、Diego、Iなど様々あります(参考: 日本赤十字社HP)。たとえばDuffyという血液型は発見された患者さんの名前のRichard Duffy氏に由来するものだそうで、その方の名前がここまで大々的に独り歩きするのもどうかと思うところはありますが、そもそも名前なので馴染みやすいです。
一方のDEA。しかもこのDEA、1だけでなく研究レベルでは3、4、5、6、7、8あたりまであります。昔は様々な名前だったのを当時の研究者がまとめてくださったように記憶していますが、まとまりすぎてピンと来ないのは私だけでしょうか、、DalとかKaiとか新しい血液型も確立されてきたらDEA9とか10とかになってしまうのでしょうか。。猫のMikという血液型はマイクという猫の名前からとったそうで、そういう方が個人的には好きなんだけどなぁ。
閑話休題。だいぶそれました。で、このDEA1の陽性率、プラスとかマイナスが犬種によって結構ばらつきがありますよ、というのが今回の論文の報告です。たとえば、DEA1陽性が多かったのはバセット・ハウンド、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、ブリタニー、ダックスフント、ミニチュア・ピンシャー、ミニチュア・シュナウザー、パグ、ロットワイラーであり、DEA1陰性が多かったのはボクサー、イングリッシュ・ブルドッグ、フラットコーテッド・レトリーバー、フレンチ・ブルドッグだったそうです。
これらの情報を念頭に置いておくと、いざ輸血が必要になった際、ドナーとの組み合わせを考える上で役立つという訳ですね。皆さまのおうちの子は上記のなかに含まれていましたか?この論文の中では、調査した6,469頭のうち61.2%がDEA1陽性であったそうですから、DEA1陰性のドナーは探すのに少し苦労することとなるかもしれません。もちろん、この報告は北米からの報告であり、日本の現状とは少し異なるかもしれないので解釈に注意は必要ですが。傾向は概ね同じなのではないかと考えています。
さて、今日の論文紹介は以上です。夜も更けてきたのでそろそろ帰ろうかなと思います。ふと携帯をみてみると晴れの予報。今夜も雨具の出番はなく帰宅できそうです。帰り道がすこーしだけ涼しくなってきた晩夏の候ですね。来月も論文紹介を宜しくお願い致します。