顕微鏡写真: 犬の破砕赤血球

先日、血液検査結果をご家族様に説明していたところ、「ああ、これが例のWBCですね。なるほどー」と仰る方がいらして、完全に先月のBlog(ワールド・ベースボール・クラシックではない方のWBC)をご覧になっている受け答えでした。まさかご家族様がこのカテゴリーの記事を読んでいるとは思いもよらず、たいへん驚きました。皆さまそのうちちょっとした学生より血液塗抹がみれるように一緒にトレーニングしていきましょう!

そんな診察室でのやり取りに気を良くして、よーし、今月はMonoだMono、「消しゴムじゃない方のMono(Monocyte: 単球)」を特集しよう。と、完全に柳の下のどじょうを狙って写真の選定から記事の構成までを考えていたところ、すでに1/30の記事で単球特集をしていたことに直前で気付きました。。。わずか3ヶ月前のことをまるで覚えていなかった自分の脳みそが恐ろしい。そんな過去の自分が消えてしまわないよう、頑張れる限りこの先もBlogに生きた証を残しておこうと思いました(笑

ということで、気分を変えて今日は犬の破砕赤血球(Schistocytes)の特集です。破砕赤血球とは、赤血球の形態異常の一つでして、赤血球が小さく引き裂かれてとにかくボロボロになっている様子です。まずは写真をみてみましょう。

イヌ末梢血-破砕赤血球、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

どうでしょうか。研修獣医師の先生と顕微鏡を覗いていると、もはやこの細胞が赤血球とは認識されていないこともあるくらい、赤血球がボロボロになっています。破砕赤血球は赤血球に対して引き裂くような機械的なダメージが与えられた場合に起きる変化であり、通常は採血のアーティファクト(人工産物)では生じないと私は習いました。したがって、血液塗抹で破砕赤血球が多数認められる場合、体内で何かとんでもないストレスが赤血球に対して発生していることを警戒する必要があります。

イヌ末梢血-破砕赤血球、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

具体的には、播種性血管内凝固症候群(DIC)という致死的な血栓症の一種、腎臓の糸球体疾患、血管炎、門脈体循環シャント、血管肉腫をはじめとした血管の腫瘍が、破砕赤血球を認めやすい疾患とされています。つまり赤血球がフィブリン血栓の網にからまってちぎれたり、血管異常の細いところを無理やり通り過ぎようとしたらボディをこすったどころか引き裂かれてしまったようなイメージですね。赤血球は酸素を運ぶトラックによく例えられますので、ガードレールぎりぎりの細い道路を通り抜けようとしたら、石川五右衛門の斬鉄剣にでもやられてしまったかのような無残な姿になった感じです。

イヌ末梢血-破砕赤血球、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

いずれも重篤な疾患であるだけに、血液塗抹で破砕赤血球を多数認めた場合はおや、、と手を止めて病態を考察する必要があります。ちなみに、上記のような重篤な疾患以外でも、鉄欠乏性貧血のときは赤血球が各種バリエーションに富んだ形態異常を呈しますので破砕赤血球が沢山出現します。なお、猫の赤血球はそもそも小さいせいか、DICのときでも破砕赤血球はあまり認められないとされています。

イヌ末梢血-破砕赤血球、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

なんとなく四枚も写真を掲載してみました。さぁ、明日からの診療で破砕赤血球をうっかり見過ごさないようにご注意くださいませ。そして来月もどうぞよろしくお願い致します。

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