英論文紹介: Dal抗原の血液型判定キット

気付けばゴールデンウィークが終わり、もはや梅雨入りなのではと思うほどに不安定な天候の日々ですね。今月も予定通り英論文紹介をしていきたいと思いますが、今回の輸血研究会の記事紹介は北海道大学の山崎淳平先生が担当して下さいました。おかげさまで当Blogもとてもスムーズに記事をアップロードすることができ、2022年11月以来、半年ぶりの25日より前の更新です!!2022年8月なんか13日にアップロードできていたのが懐かしい。本当は10日、20日、30日、とかで目標の月3回更新をバランスよくやりたいんですけどね、どうしても「夏休みの宿題は後回しにした方がお尻に火がついて効率良いに違いない!」と腰が重いタイプの人間でして。。

さて、今回の英論文紹介は血液型判定キットに関してです。Dalという血液型については過去に当Blogでも紹介しましたが、今回は血液型判定キットについてつらつら書きたいと思います。血液型って、どのように判定しているかご存じでしょうか?

医学では、血液型判定には主に試験管凝集法かカラム凝集法を用いています。簡単に説明すると、試験管凝集法は試験管内で血液と血液型判定試薬を混和し、その凝集パターンによって判定を行うものです。試験管を傾けたりゆすったりして、「…よし、A型だな」みたいな職人技の世界です。凝集パターンの判定には、知識は勿論ですがある程度技術が必要で、びしっと血液型を断言するためには鍛錬が必要そうです。一方、カラム凝集法も基本は同じ原理ですが、特殊なゲルを通して判定を行うため、定性、定量評価がしやすい印象です。このゲルを通過できたらA型!引っかかったらB型!みたいな感じです。なんなら全自動輸血検査装置なるもので機械が判定することもできるそうです。かっこいい。

では犬や猫の血液型判定はどうかと言うと、なぜか医学とは事情が異なり日本ではカード凝集法がスタンダードです。カード凝集法とは、あらかじめ試薬が塗布された紙の上に血液を滴下して、その凝集パターンにより血液型を判定するものです。欧米ではカラム凝集法でも判定されているようですが、日本にはその試薬が流通していないため、私の知る限りほぼ100%がカード凝集法による判定です。カード凝集法は「キット」として販売されているくらいなので、説明書通りの手順を踏めば基本的には誰でも血液型判定をすることができます。大学のときの授業でも、そのキットを使って血液型を判定できたことを覚えています。

このカード凝集による方法は、個人的には少し悩ましい点もあるように感じています。上述の試験管凝集法は、確かに職人技の世界で煩雑な印象を受けますが、特殊な器具の用意も必要なく、それだけに微妙な判定をしなければいけない時は自由自在にカスタマイズできる可能性があります。また、カラム凝集法は特殊なカラムの用意が必要ですが、白黒はっきり判定しやすいというメリットがあります。しかしカード凝集法は、基本的にキットの説明書通りの手順以外は行えませんし、「これDEA1.1陰性…?いや、待てよ、少しぶつぶつしているか…陽性?」とか、「Aはもちろん、、Bにも反応しているように思うけど、、まさかAB型…そんなこと確率的には圧倒的に低いよなぁ、何か手順間違えたか…?」みたいに、判定時に疑心暗鬼になってしまうことも時折経験します。

ですから、本当は新しい血液型判定キットはカラム凝集法のものが日本にも流通してくれると良いんだけどなぁ、とこっそり願っているんですが、この論文をみるとカード凝集法によるキットがまだまだ開発されているようですねぇ。Dalという血液型抗原は日本で判定することが今はできませんので、その点では渇望している血液型判定キットではあるのですが。しかしもっと本当のことを言えば、試験管凝集法による血液型判定が犬や猫でも普及してほしいなぁと思っています。あの、ガラス試験管を通して判定するときの職人技が、玄人志向な感じがしてとてもカッコいいように思うのです(笑 試薬を探して海外から個人輸入してみようかなぁ。では来月も英論文紹介をよろしくお願い致します!