英論文紹介: 輸血と感染症

毎月20日を超えると更新をし始めるこの計画性の無さ、、いやもう逆に20日頃になるとそわそわし始める規則正しい体内時計に驚かされます。髪の毛なんかも、そろそろ伸びてきたと感じて理容室へ行ってみると、大抵いつもと同じ間隔で散髪していたりして。細胞周期は一定のリズムで回っているんだなぁということを日々実感します。細胞の声に耳を傾けながら、自堕落な生活を慎んでいきたいものですね。さて、話がうまくそれたところで本日の話題に移りたいと思います。本日は英論文紹介です。私が更新している日本獣医輸血研究会の記事もご覧下さい。

今回は輸血と感染症というテーマで記事を書かせて頂きました。輸血療法は最も一般的に行われている移植治療と言われています。したがって、ドナーの健康を害することなく血液を採取し、その輸血用血液の安全性を確認した上で、レシピエントとの適合性を確認して正しく投与し、効果や副反応をフォローアップする必要性があります。このうち、血液の安全性という部分で関わってくるのが感染症のチェック体制です。

医療の方では、1964年に起きたライシャワー事件をきっかけに国の方針が統一化され、現代のような日本赤十字社を中心とした献血一本の管理体制になりました。そうすることで輸血の安全性は格段に向上した訳ですが、少なくとも日本の獣医療では動物用血液バンクが認められていないので、輸血用血液の感染症対策は各動物病院ごとに向き合っていかなければなりません。

街の動物病院でよくある輸血用血液の確保の方法としては、①スタッフが飼育している動物からの献血、②その動物病院独自のネットワークに登録した動物からの献血、③お知り合いなどレシピエントのご家族が協力を要請した動物からの献血、が挙げられます。

このうち、①や②に関しては日頃から生活環境を含めてよく知る子たちなので、フィラリア、ノミ・ダニ予防歴、ワクチン接種状況、繁殖歴の把握など感染症対策を行いやすいと思います。③に関しては、協力を緊急要請された面識のない子たちからの献血となることが多いです。したがって、状況がひっ迫しているなかでも問診を通じてしっかり上記の予防歴などを把握し、健康状態の確認もより慎重に行う必要があります。

また、予防が万全に行われていたとしても、感染症のスクリーニング検査についても考えなければいけません。日本国内だとIDEXXさんが輸血ドナーパネルという感染症に関する網羅的な検査を受注されていますが、検査結果が出てから献血、となったら輸血が実際に行えるようになるまで一週間程かかってしまいます。そして、蛇足かもしれませんが結構費用がかかるところもネックです。

獣医療で輸血を考慮する場合は緊急的な場面のことがほとんどなので、費用のことはさておいても毎回輸血ドナーパネルを提出するのは、よほど献血、そして血液の保存システムが確立されている動物病院でないと厳しいかもしれません。少なくとも、当院の規模ではそこまでの実施体制は困難です。。

今回紹介したイタリアの研究データでは高率にドナー犬から節足動物媒介性の病原体が検出されていてとても驚きましたが、日本、特に首都圏で診療している範疇ではほとんど遭遇しない病原体でもあります。したがって、今回の文献を参考にしてまず当院が目指すべき輸血用血液の感染症対策としては、①や②の子たちは前もって定期的にIDEXXさんの輸血ドナーパネルで調べておくこと、そしてすべてのドナーの子たちに共通することは、丁寧な問診と院内で実施可能かつ必要な感染症検査は確実に行うことと考えています。すいません、前置き長いわりに普通な結論で(汗

地方で活躍している獣医師の友人と連絡を取っていると、感染症の多さに毎回驚かされるんですよね。首都圏でもワクチン接種、フィラリア予防などの実施率が低くなると、10年、20年後にはまたそのような感染症が蔓延するようになるんだろうかとふと思うことがあります。皆様、予防できる病気はきちんと予防して健康長寿を目指しましょうね。写真は全然関係ないうちのシャーリーの笑顔写真です。威嚇している訳ではなく、感極まると歯茎だしてスマイルしちゃうんです(笑

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