顕微鏡写真: 猫の顆粒球

先日は白血球の中の好中球という細胞を紹介しましたが、好中球は顆粒球というジャンルの細胞の中の一種類です。白血球の中の顆粒球の中の好中球、という分類と言うことになります。顆粒球はその名の通り、細胞の中に特異的な顆粒を有している細胞で、「自然免疫」という生まれつき備わっている免疫機能を担っています。病原体に対する瞬発性が高い細胞で、細菌、寄生虫、真菌などから身体を守ってくれる一方、アレルギー反応に関与していたりすることもあります。

顆粒球の中には好中球、好酸球、好塩基球があって、顆粒の染色性によって区別されています。早速こちらの写真をご覧下さい。これらは猫の顆粒球で、aが好中球、bが好酸球、cが好塩基球です。細胞の中に含まれる粒々の色が違うのがお分かり頂けますか?また、今まで紹介してきた赤血球より何回りか大きいことも分かりますね。なお、赤血球はアーティファクト(血液塗抹を作る過程で出来た人工的なもの)でぶつぶつしていて恐縮です。

ネコ末梢血、対物レンズ100倍、Diff-Quik染色

一般的に好中球の顆粒は薄ピンク色、好酸球の顆粒は赤色、好塩基球は青色、といった具合で、いつもリトマス試験紙みたいだなぁと私は思っています。ただ、人と違って犬や猫の好中球の顆粒は経験上、しっかり染まってくれず、はっきり顆粒が視認されないことが多い気がします。この写真でも好中球の顆粒はぼんやりそこに何かあるかも、、といった雰囲気でほとんど見えないですよね。染色条件にもよるかもしれませんが、はじめて人間(自分の血液 笑)の血液塗抹をみたときは好中球の顆粒がはっきり染色されていて驚きました。

細かい犬猫の違いとしては、猫の好酸球の顆粒は細長く桿菌状、犬の好酸球の顆粒は丸く球菌状でときに顆粒が融合して大型化していることもあります。好酸球は写真が撮れたのでお示しします。先にお示しするのが猫の好酸球で、顆粒が細長いことが分かります。ただ、こちらもアーティファクトで細胞が壊れてしまい、細胞膜(細胞周囲の丸い囲まれている部分)が見えずに顆粒がまき散らされてますね。まき散らされている分、顆粒がよく見えているというのもありますが。

ネコ末梢血、対物レンズ100倍、Diff-Quik染色

続いて犬の好酸球です。この写真は融合していないですが、猫と違って顆粒が丸いのがよく分かりますね。ちなみに人の好酸球の顆粒も丸いですが、私の少ない経験則ではもう少し顆粒が小さいような気がしてます。この顆粒の動物種による違いって何なんでしょうね。誰かご存知の方、そっと教えて下さい。

イヌ末梢血、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

また、猫の好塩基球の顆粒は一枚目の写真のようなラベンダー色で細胞質の中に沢山存在していることが多いです。一方、犬の好塩基球の顆粒は数が少なくてあまり目立たず、より濃い青~紫色を呈していることが多いです。犬の好塩基球は写真が用意出来ずすいません。

と言うのも、好塩基球って中々にレアキャラクターなんです。数で言えば、たとえば血液1μLの中に好中球が2,500-12,500個、好酸球が0-1,500個に対して、好塩基球は200個未満とかRare(稀)と書かれていることが多いのです。熱心な当blogファンな方は、猫の血液1μL中に赤血球が6,000,000個含まれていることをご存じなので、好塩基球の200個未満がいかにレアなのかお分かり頂けることと思います。

したがって、この顆粒球三役が共演しているこの一枚目の写真、我ながら見つけた時は感動しました。三大スターそろい踏み。西部黄金時代の秋山、清原、デストラーデが一枚の写真におさまっているような、いやなんか違うか。遭遇頻度を考慮すると、スライム(好中球)、スライムベス(好酸球)、メタルスライム(好塩基球)が一度の戦闘に現れてきた、くらいの確率でしょうか。そう言うと、身体の中でかなり良い仕事をしてくれている好中球さんに何か申し訳ないような気もしますが。

さて、今日はこのくらいにしておきたいと思います。赤血球、顆粒球と来ていますから、来月の顕微鏡写真はやはり血小板ですかねぇ。あるいは単球かリンパ球あたりも中々渋めです。そして、今日は11/29。明日もノルマ達成のために頑張ってblog更新しますので、どうぞお付き合い下さいませ(笑

顕微鏡写真: 猫の顆粒球” に対して1件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。