英論文紹介: 血小板を冷蔵するということ

ふと気付くと前回の更新から20日経過していて恐ろしいですね。。当院界隈のニュースとして、10/18はイオン天王町ショッピングセンターのリニューアルオープン日でした。当日は9時の開店にあわせて既に行列ができていたので驚きです。そんな当院も実は10/18で開業半年の記念すべき日でしたが、今のところ行列が見当たりません。予約制だから行列を回避出来ているんだ、と考察することにしますが、あれ、おかしい、目から水が出てくるなぁ…

さて、今日は英論文紹介です。こちらの別サイトもご参照下さい→日本獣医輸血研究会 Journal club「血小板製剤の冷蔵保存」。何を隠そう、私は大学で犬猫の血液、特に犬の血小板輸血について研究して博士号の学位を取らせて頂きましたので、このジャンルは非常に親近感があります。

別サイトのイントロで記載した通り、血液の代表的な構成成分は白血球、赤血球、血小板、そして血漿が含まれますが、そのうち輸血療法で使用されるのは主に赤血球、血小板、血漿の三種類です。しかしながら、獣医療では血小板の補充を目的とした輸血が行われることはほとんどありません。それはなぜか。

理由はいくつかあるのですが、たとえば、①血小板製剤を作製することが難しい、②血小板製剤の保存方法が難しい、③血小板輸血の適応症例が定まっていない、あたりが考えられます。

まず①ですが、血小板製剤は作製するのが少し、難しいんです。血小板製剤の作製方法には全血から遠心分離して作る方法と、献血ルームに行くと置いてある成分採血装置を用いて作る方法があります。前者は犬や猫でも取り組みやすい方法で、通常通りに輸血採血をしたのちに、大型の遠心機に血液を入れて、通常の遠心条件より弱めに遠心して血小板と血漿の層を回収します(でも結構職人技なので、初見では中々できません)。場合によりもう一度再遠心して血小板を濃縮したりします。私はこの方法で血小板製剤を作製して研究に使用していました。

一方、後者の成分採血装置は大掛かりでして、成分献血したことのある方はお分かりと思いますが、1時間ほどかかるのです。動物の場合、あの装置につながれたまま、じっと1時間も漫画を読んだりテレビを観たりして待ってくれませんので、基本的には献血時に全身麻酔が必要になります。加えて装置の購入にも費用がかかって非現実的な方法ですが、完成した血小板製剤は量・質ともに抜群です。この血小板製剤が日赤さんにお願いすれば取り寄せできる医療の世界って、素晴らしいなぁと思います。だから時折私も成分献血して社会貢献してます←あの装置を近くで見たくてしょうがないという説もあります笑

続いて②ですね、保存方法が難しい。血小板って、非常に気難しい子でして、赤血球や血漿と違って、低温保存すると輸血後に身体から速やかに排除されてしまうのです。どれくらい速いかと言うと、これは人間での話ですが、室温保存していた血小板が輸血後に5-7日間循環できていたとしたら、冷蔵保存していた血小板は輸血後1-2日以内に消えてしまいます。室温保存血小板と同じ輸血効果を期待したければ、冷蔵血小板だと連日くらいのペースで輸血しないと事足りない計算になりますので、いくらドナーが沢山いても血液の供給不足に見舞われてしまいます。

では室温保存しておけば良いじゃんと思われるかもしれませんが、感覚的に言うと、血小板って非常に傷みやすいんです。なんの配慮もなく室温に血小板を一晩か二晩置いておいたら、それこそ廃棄しなければいけないレベルのダメージを受けてしまいます。柔らかい、ガス交換能の高い特殊な素材で作られたバッグの中に、適切な量を充填して、温度は22℃に厳重管理、そして一分間に60回くらい左右に優しく浸透してあげること、これが現在推奨されている保存条件です。もちろん、室温なので細菌増殖も起こりやすく、一連の作業を極力清潔に行う必要があります。どこぞの箱入り娘ですか、という保存条件ですよね。こんな大変なこと、動物病院の日常診療の傍らで行える作業ではありません。日赤さんって本当に素晴らしい。

そして最後に③です。血小板が少なければ勿論いつだって適応を考慮しても構わないかもしれませんが、そもそも獣医療では血小板輸血が一般的ではないので、適応が定まらないと言うか、議論にもあまり上がってこないように思います。医療では、強力な化学療法、造血幹細胞移植、人工心肺使用手術時の周術期管理時など、血小板輸血の適応について厚生労働省が指針を提案しています。個人的には、血小板が少なくて難儀する場面と言えば、免疫介在性血小板減少症 (IMT) により消化管出血が起きている場合ですが、先程の指針ではIMTは薬剤での治療が優先で、血小板輸血は通常適応にならないとされているので難しいところです。

その他にも、血小板は輸血後に脾臓に1/3がトラップ、捕捉されてしまうと言われていて、全血輸血程度の血小板補給量では血小板数の増加が期待できない、という点も獣医療で血小板の補充を目的とした輸血が普及しづらい理由に挙げられるかもしれません。実際、全血ではなく血小板製剤を充分量輸血すると、血小板数は増えるんですけどね。それを体感したことのある獣医師は数少ない気がします。

論文の話からはやや脱線して、獣医療における血小板輸血の現状を概説したような記事になってしまいました。ここから血小板を冷蔵することについてアツく語り始めても良いのですが、いま最もアツく議論するべきなのは、当院にイオン天王町店のような行列がいまのところ出来ていない理由についてでした。しかしながら、目から出てくる水でパソコンのスクリーンが見えなくなってきたので、今日はこのあたりで終わりにしたいと思います。皆様のご来院、心よりお待ちしております。

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