顕微鏡写真: 犬の赤血球

正直に言います。月3-4回更新目標の帳尻をあわせるため、急ピッチでブログを更新しています(笑

夏休みの宿題をぎりぎりで終わらせる小学生のようですが、間に合わなくても良いやと開き直ってしまうより、あきらめないで間に合わせようとする気持ちが大事だと思うんです...!(計画的に終わらせる方がもっと大事です 笑)

さて、先月に引き続き、今回も赤血球の写真をお示ししたいと思います。今回は犬の赤血球の写真です。さっそくこちらに、前回の猫の写真とあわせてお示し致します。(なお、例として示しておきながら、この犬の血液塗抹は健康な子のものではないので、Imperfect spherocyteといえば良いのか、そもそも非典型的な様相を呈していることをお詫びしておきます。)

イヌ末梢血、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色
ネコ末梢血、対物レンズ100倍、Diff-Quik染色

前にも書いたように、犬の赤血球は直径約7µm、猫は直径5-6µmと少し小さめでして、写真でもひと回りくらい小さいことが分かりますね。また、犬の赤血球は丸い中心部のくぼんだ色の薄い部分(セントラルペーラー、犬の写真の方の矢印)が猫に比べると目立つと言われています。このセントラルペーラーは、赤血球の表面積を増やすことにより、酸素と結びつきやすく=ガス交換しやすくするための工夫とされています。

犬はセントラルペーラーが目立つとは言え、あまり本には書かれていない気がするのであくまで私見ですが、血液塗抹の観察部位によっては目立たない部位が確実にあります。たとえば以下の写真は上記と同じ血液塗抹の異なる観察部位ですが、セントラルペーラーがまったく見えませんよね。

イヌ末梢血、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

また、血液塗抹の作成方法によっては同じ血液でも目立つものと目立たないものがあるように思います。具体的に言えば、引きガラス法で作成した血液塗抹はあまり目立たず、合わせガラス法で作成した血液塗抹の方が目立つような気がします。これは完全に個人の見解です。

犬の血液塗抹を観察する上で、この点を把握しておくことは重要性が高いように思っています。なぜなら、犬の赤血球のセントラルペーラーが目立たなくなる病的変化として、以下の写真のような「球状赤血球(矢印)」というものがあるからです。写真が古くて撮影条件が異なり恐縮です。

イヌ末梢血、Wright-Giemsa染色

わかりますか?矢印でお示ししたもの以外にも、茶色みが強くてひと回り小さく、やや立体感があるように浮き出て見えるものは全て球状赤血球です。この写真の中の半数くらいが球状赤血球ですね。

これは犬の免疫介在性溶血性貧血(Immune Mediated Hemolytic Anemia: IMHA)という病気を診断する上では大切な鍵となってくる変化なのですが、この変化と、上述したようなセントラルペーラーが見えない人工的な変化を見分ける必要があります。要は、球状赤血球の出現ではないのにそういう風に判断してしまうと、IMHAとして診断を誤ってしまう可能性があるんです。勇み足でIMHAと診断して、そのまま振り返ることもなく治療に突っ込みすぎないよう、気を付けないといけません。言うは易しですが、行うは難しなんですよねぇ。

血液塗抹の観察は非常に主観的な検査なので、どこまで論理的に、客観的な根拠を持って示せるかが重要でもあります。今の時代はコマーシャルラボで働く先生方が血液塗抹を診て下さいますから、私達臨床獣医師は、判断に悩む場合はそう言ったサービスを利用するのもひとつの手ですよね。

さて、赤血球の総論のような話しぶりから始まったのにだいぶ脱線してしまいましたので、今日はこんなところにしておきたいと思います。来月はどうするか、、奇形赤血球にするか、白血球にするか、あるいは私が好きな血小板にするか、、悩ましい。しかし、9月の3回更新目標はちょっと心が折れかけています。10月に4-5回更新するとか、姑息な代替案を考え始めている私がいます(笑

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