英論文紹介: 猫の輸血用全血の保存性
7月になりましたが今年は類をみない梅雨明けの早さとのことで、わんニャンともに人間も夏バテは大丈夫でしょうか?かく言う私はすっかりバテておりまして、このままじゃいけないと思って日々食事には気を遣って過ごすようにしています。その関係でInstagramには紹介しておりますが、当院の近辺には紹介しきれないほどに素敵な飲食店がございます。動物も人も暑さに負けずしっかり食べて水分補給して、(特に人は)いい汗をかいて上手に夏を乗り越えましょう。
さて、今日は先月から始まりました英論文紹介のお話です。今回も猫の輸血に関わる話題で、猫の輸血用血液がどの程度保存できるのかという話題です→別サイト: 日本獣医輸血研究会 Journal club「猫の輸血用全血は21日間保存可能?」
開院2ヶ月ほどの当院でも既に輸血は何度か考慮して実際に輸血する場面があったように、実は獣医療においても輸血療法は大変身近なものとなっています。とは言え、当院のような小さな動物病院では毎日輸血の必要性を迫られる訳ではないので、代替療法が見当たらずどうしても血液が必要な場面に限り、その都度ドナーを募って、血液を保存することなく使用することとしています。
一方、大学附属動物病院など大きな動物病院では、毎日のように、そして昼夜を問わず輸血の必要性が議論される為、そのたびにドナーを募っていてはとても血液の供給が間に合いません。たとえば夜中に緊急で輸血をしなければならなかったとして、その時間から献血してもらえる可能性ってどれくらいあるでしょうか?動物は自ら献血に行くわけではありませんので、ほぼゼロに近いかもしれません。
そこで、動物とそのご家族、そして獣医療従事者も時間のとれる日中に計画的に血液を採取、保存することができれば、24時間、安心して輸血用血液を使用することができます。その際に問題となってくるのが血液の保存性です。食料品で言えば保存温度とか消費期限に該当するものと言えるでしょうか。
様々な問題点から猫の輸血用血液の保存性はまだ確立されていないのですが、今回紹介した論文では、冷蔵で21日間程は赤血球の有効性を維持したまま保存可能ではないかと示唆しています。
今ひとつピンとこないかもしれませんが、これは猫の輸血療法を考える上で、とても大きな進歩だと私は思っています。概ねひと月に一頭から事前に献血しておいてもらえれば、その月は緊急的な輸血適応症例に即座に対処することができますので。ちなみに、犬は類似の研究報告だと28日間くらいは大丈夫そうと言われています。人はさらにもう少しくらい長いようです。
血液の保存システムが確立されたら、保存血液を新鮮なうちに有効活用できるように、血液を保存している施設のデータベースを共有できたら…ブツブツ……と、大学院では輸血用血液の保存に関する研究に携わっていただけに、ついつい長文コラムになってしまいました。
誰か最後まで読んでくれてる奇特な方いるんでしょうか、このチラシの裏シリーズ。こりずにまた来月以降もやりますので、どうぞ宜しくお願い致します(笑)
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