顕微鏡写真: 犬の単球

動物病院界隈のあちらこちらで案内を見掛けるかもしれませんが、きたる2023年の2月19日は愛玩動物看護師の国家試験の日です。記念すべき第一回目の試験なのです。少し調べてみたところ、1950年に第一回目の獣医師国家試験や看護婦国家試験(当時はまだ「看護婦」だったようです)が執り行われたようなので、だいぶ時間はかかりましたが動物病院業界もついにここまで来てくれたのかと嬉しく思います。設立にかかわった方々や現場で声をあげ続けてくれた動物病院のスタッフの方々に敬意を表します。ちなみに今年の獣医師国家試験は2/14、15の二日間です。いずれの受験生の皆さまにおかれましても、心身ともに健康で当日を迎えられますことを心からお祈り申し上げます。

さて、そんな受験生の少しでもお力になれるように、今日も顕微鏡写真をアップロードしていきたいと思います。今日は犬の単球を特集したいとおもいます。

ご存知の方が多いと思いますが、単球は白血球の中の一種類です。したがって、身体を病原体や異物からその貪食作用により守ってくれる訳なのですが、行く先や分化の過程の違いによって名前が変わるのがややこしいです。

血管壁を抜けてある組織に行けば組織球(マクロファージ)になったり、特に皮膚の方に行くと樹状細胞(ランゲルハンス細胞)と呼ばれて抗原提示機能を発揮したり。その他にも骨の方で分化したら破骨細胞になったり、単球からダイレクトに分化するわけではありませんが脳の方にはミクログリア(小膠細胞)という親戚みたいな細胞もいたりします。

そんな多種多様な性質を持っているせいか、血液塗抹における単球も中々に顔つきがバリエーション豊富で、他の細胞との判断に悩ましい場合も個人的にはあります。では早速こちらをご覧下さい。

イヌ末梢血-単球、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

単球は顆粒球やリンパ球と比べると少し大きく、細胞の形はまん丸というより不整形であることが多いです。核は腎臓の形や馬蹄形などとよく言われますが、切れ込みや折りたたみにより顆粒球のように分葉しているように見えたりと不規則な形態を示します。

細胞質はやや灰色がかった薄い青みを帯びており、赤く染まるアズール顆粒を少数有していることや、空胞を認める場合もあります。次に示す、同じ症例の好中球と比較してみて下さい。

イヌ末梢血-好中球、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

いかがでしょうか?核はどちらも似たように分葉しているようにみえますが、好中球は先程の単球よりひと回り小さく、細胞質は青くなくて白く抜けた感じがありますよね。そして空胞もみられません。

もう少し専門的な話をすれば、核のクロマチン凝集という、核の質感、みたいなものが違うのがわかりますか?単球はきめ細かく繊細でレースのようとも表現されるのに対して、好中球はぶつぶつと黒いシミみたいなのが目に付くと思います。

イヌ末梢血-単球、対物レンズ100倍、Diff-Quik染色

もう一度単球を示してみました。やはり少し大きく、細胞質は灰色がかった淡い青色で、この単球は真ん中辺りに空胞がありますね。

イヌ末梢血、対物レンズ100倍、Diff-Quik染色

しつこいようですがもう一枚。こちらは矢印で示したものが単球で、右隣が好中球です。最初からこういう風に比較した写真を示したら良かったですね(笑

いかがだったでしょうか?受験生の皆さまはもう勉強し過ぎていてご存知のことばかりだったかもしれませんが、どなたかのお役に立てたら幸いです。でも何より、体調管理頑張ってくださいね!風邪を引かないようにしっかり休息をとって、あと少しのらりくらり乗り越えましょうー!

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