羽化

2022年の夏が終わろうとしていますね。先日、Instagramの方にはアップロードしましたが、当院でアゲハ蝶が羽化しました。折角ですからこちらでも取り上げたいと思います。虫の写真がたくさん出てくるのでニガテな方はご注意ください!

それは8/6のことでした。夕暮れ、わんちゃんの散歩のついでに来られたご家族様から歯周病の相談を受けて玄関先でお話をしていました。一生懸命説明するワタシ、一方で壁の方をちらちら見て気もそぞろなご家族様。そしてついに、

ご家族様「先生、その話よりあそこの壁のところにアオムシがいるのが気になっちゃって…」

わんこ・ワタシ「(え、その話よりアオムシて…(; ^ω^) )」

しかし確かにそこには立派なアオムシがじっと佇んでいました!

アゲハ蝶はサナギになる直前にベストな場所を求めてウロウロとさまよい歩くのですが、シャッターレールのあたりでサナギになろうとし始めているなんて、完全に選択ミスです。終業のシャッターとともにあの子の人生(虫生)を終了させかねません。どうにかしてあげないと。

でも大丈夫、ワタシは獣医師です。蜂の病気だって大学で学びましたし(アオムシと関係ない)、なんとかこの危険な場所から保護して羽化の手伝いをします!と宣言して、教えてくれたわんこのご家族様はその場をあとにされました。そしてアオムシをひとまず院内のパキラのところへ移動させて、じっと落ち着いてくれたところを見届けてその日はワタシも帰りました。

翌朝、出勤してきてアオムシを探しましたが、落ち着いていたパキラのところにいません!確実に院内にいるはずなので、踏んだり掃除機で吸ったりしないようにとスタッフに周知して、探し始めました。前日お休みだったスタッフは訳も分からず朝からアオムシを大捜索です。

いました!そしてサナギになってる!しかし今度はカーテンレールの裏の窓枠です。なんでそんな綱渡りがお好きなんでしょうか。カーテンをうかつに開け閉めできない。

まぁカーテンの開け閉めは気を付ければ良いとして、次の問題は蝶の羽化時の転落の危険性です。サナギから羽化する際に、蝶が掴まる足場がないとそのまま転落して羽化失敗の原因となります。本人があの窓枠のところでサナギになったので大丈夫なのかもしれませんが、掴まりづらそうですし、翔び立つときにカーテンが邪魔になりそうです。

そこで、色々調べて蛹ポケットなるものを作成し、サナギを移設しました。完成写真がこちらです。

これでもう大丈夫、あとは羽化を待つだけです。ところで、サナギって全く動かないと思いきや、触るとクネクネ動くのご存知ですか?決して無駄に刺激を与えてはいけないのですが、あの力強さは驚きます。

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そして、2日後にその日は来ました。羽化です。朝、出勤してきてシャッターを開けると受付カウンターに美しいアゲハ蝶の姿が…!ちゃんと足場も使ってくれていました。

宣伝がてら当院のロゴを背景にもう一枚。

アゲハ蝶が羽を伸ばして翔び立つまで、受付カウンターでそっとしておきました。時折、確かめるようにゆっくり羽を動かしたり、もぞもぞと歩いて飛び立つ場所を選定したり。羽化から3時間ほど経った頃でしょうか、待合で待たれていたご家族様が声を上げました。

「あ、先生、受付にいた蝶がうちの子のキャリーに!」

ついにアゲハ蝶は決心したようです。しばらく院内を優雅に翔んでいてもらいたい気持ちは山々ですが、当院のような狭いところではガラスにぶつかったりしてうまく翔べませんし体力を消耗してしまいます。キャリーに止まっていたアゲハ蝶を手で優しく包んで、そのままその飼い主様と向かいの天王町公園まで急ぎました。

公園の柑橘の木の下で手を開けると、アゲハ蝶もそこが外であることに気付いたようです。ひと呼吸おいて大きくゆっくり羽を広げたかと思うと、夏の真っ青な大空へ向かって翔んでいきました。

感無量です。とてもステキな夏の思い出ができました。皆様も素晴らしい夏を過ごせたことを心からお祈り致します。

※当院は犬猫専門です。それ以外の動物や特に昆虫に関してはあまり詳しくないのでお気を付け下さい笑

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