英論文紹介: 猫の輸血に用いる輸液ポンプ

さぁ、年度が変わって初回の更新です!今回も張り切って英論文紹介していきましょう。私が更新している日本獣医輸血研究会の記事もあわせて参照下さい。

人間の病院で静脈点滴と言うと、看護師さんが点滴筒の中で滴々している雫の数を数えて投与(自然滴下と言います)しているイメージが多い気がしますが、動物病院で静脈点滴と言うと、ほぼ間違いなく点滴機、輸液ポンプを使用していると思われます。その理由について何かで詳しく調べたことはないのですが、犬や猫の場合は体重が少ないので、自然滴下だと中々思うように滴下のペースが調整できないからではないかと個人的には思っています。そう言えば学生時代に実習で牛の点滴をお手伝いしていた際、巨大な点滴バッグを自然滴下で投与していたので、やはり体重・投与量/速度による違いなのかなぁと思います。

さておき、だから動物病院では輸液ポンプは大変身近なものです。どんな動物病院にも一台以上は置いてあるのではないでしょうか。以前勤めていたような大きな動物病院では、輸液ポンプが数十台ありましたし、症例数が多い日はそれでも輸液ポンプが足りなくなりそうになるので、争奪戦が起きないように知恵を絞っていました。入院症例数が多いと人間の動線が輸液ポンプだらけになって通行を妨げたり、あとはしゃがんだ後に立ち上がる際、輸液ポンプに頭をぶつけたりしていました。これ、動物病院あるあるですよね。頭ぶつけたことない人がいたら教えて下さい(笑

しかしそんな輸液ポンプも、メーカーさんはあくまで「輸液」を想定した設計をしておりまして、「輸血」のことは必ずしも考慮されていないケースが多いです。これの何が不都合かと言いますと、「輸液」は単純に液体を送液することに専念していれば良いのですが、「輸血」で送り出す血液は主に血漿などの液体中に赤血球が浮いています。

この赤血球は、血小板ほどではないですがデリケートな細胞でして、輸液ポンプの中で押しつぶしながら送液されると壊れてしまう=溶血してしまう可能性があるのです。折角赤血球を増やしたくて輸血を行っているのに、身体に入る前に機械の中で壊されてしまっては輸血効果が得られず悲しいですよね。ちなみに悲しいだけではなく、壊れた赤血球から遊離したヘモグロビンは、輸注された患者さんに腎障害などの副作用を及ぼす危険性すら懸念されます。

今回紹介した論文は、そう言った普通の輸液ポンプが猫の赤血球をどれだけ溶血させてしまうのか、に迫った論文でした。結論はなんと、、、「影響なし」。。。いや、良いんですけどね、良いんですけどね。当院なんかほら、やっぱり血液にはこだわりありますから、輸血用にも配慮されたテルモ株式会社の輸液ポンプが、通常動物病院でよく見る輸液ポンプの3倍のお値段しても買ったんですけどね、いや、良いんですけどね、ホントに。安全に輸血したいなって思ってますからね。テルフュージョン輸液ポンプ28型、液晶とかすごく見やすいし。白くてスタイリッシュだけど丸みを帯びたフォルムで可愛さも兼ね備えていますし。アラーム音だって慈愛に満ち溢れています。専用の輸液ラインがまたお値段高めで、そんなところがもう、手がかかって素敵です。もう当院には君しか考えられない。まさに常人には理解できないスペックのこだわり設備ということで。来月も論文紹介をよろしくお願い致します。