英論文紹介: クロスマッチはEDTA血漿?
ご存じでした?関東地方は7/22に梅雨明けしたそうですね。梅雨入り前に相当雨に降られていたので、雨具を新調してみたら一度も雨に降られなかったという。こんなに雨に降られてみたいと思った梅雨は人生において今までなかったかもしれません。まぁ備えあれば憂いなしということで、、
さて、今月紹介する英論文はいつもより少しだけマニアックですね。私が更新している日本獣医輸血研究会の記事もあわせてご参照下さい。
過去に何度か記事に取り上げているので熱心な読者の方はご存じのことと思われますが、輸血関連検査におけるクロスマッチとは、ドナーやレシピエントの血液を混ぜ合わせてその適合性を判定するものです。もう少し細かく言えば、主にドナーの赤血球とレシピエントの血液の上清部分を混和してその凝集反応や溶血反応を確認する検査です。なぜ血液の上清部分を使用するかというと、その中に免疫グロブリンや補体という、輸血血液に対する拒絶反応を引き起こす成分が含まれているからです。
高校生物で習ったような気がしますが、この血液の上清部分は血漿あるいは血清として検査に供されます。前者の血漿は血液が固まらないよう抗凝固剤処理してそのまま分離したもので、後者の血清は逆に血液を凝固させてから分離したものです。どちらも透き通った液体で肉眼的に区別はできません。余談ですが、犬や猫の血漿(血清)はほとんど透明に近い色合いなのですが、対して人間の血漿(血清)はやたら黄色い有色透明なんですよねぇ。初めて自分の血漿を見たときは黄疸と見まごう程で、犬や猫に比べて心が薄汚れているのかなと少し寂しくなりました(笑
閑話休題、この肉眼的には区別できないような血漿あるいは血清のどちらをクロスマッチに使用するのが最も適しているんだろうか、という点を調べたのが今回の論文です。結論としては、血清もまぁ悪くないけれども、EDTAという抗凝固剤を用いて採血した血漿が、血清よりも検査感度が高いし、採血量も少なくて済むから適しているのではないかというお話でした。理論上、血清でないと補体による溶血反応を検出できない可能性は懸念されるのですが、今回の研究ではそのような血清の優位性が示されることはありませんでした。
これまでも私はクロスマッチにEDTA血漿を用いていましたが、今回の論文をもとに引き続きEDTA血漿を用いていこうと考えました。しかしながら、確率的には少ないのかもしれませんが上述した補体による溶血反応のことは知識として頭に入れておく必要はあり、場合によっては血清も採用していこうと思います。
今回のご紹介は以上です。血液に関心を持っている人でなければ、どっちでも良くないか、、と流されてしまいそうなテーマを研究されている筆者たちが素敵です。しかも本文に目を通すと研究手法も結構渋くて、垂涎ものの一報でした。え、涎たれません?おかしいですねぇ←自分が。とりあえずシャーリーとタリの微笑ましい写真を最後にお見せしてお茶を濁したいと思います。