顕微鏡写真: 犬の血小板

今日は2022年の12月30日です。近所の松原商店街やイオンスタイル天王町さんは年末年始の買い出しの方々でごった返しておりました。コロナ禍になってからそういう人混みとは疎遠になっておりますので、最初はぎょっとしてしまいますね。皆様コロナやインフルエンザなどの感染症、そして事故には気を付けて年末年始をお過ごし下さい。さて、松原商店街とは打って変わって人気(ひとけ)の少ない当院から張り切ってブログを更新していきたいと思います。今日は顕微鏡写真で血小板について触れていきます。

イヌ末梢血、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

さあ、いかがでしょうか?この写真の茶色っぽくて丸くて沢山写っている赤血球以外の細胞、14個写っている紫色の小さい細胞がそうです。血小板なんです。サイズにバリエーションはありますが、人の血小板の直径は約2-3µmと言われていて、犬や猫の血小板も大体同じくらいの印象です。この写真に写っているものも、赤血球の直径(約7µm)の半分未満くらいがほとんどですよね。ちなみに、人間の肉眼の限界は0.2mm(200µm)程と言われていますので、とても肉眼で見えるものではありません。

それほどまでに小さな細胞なので、顕微鏡の解像度が低かった時代はよく見えなかったり、あとは血液中のゴミのように思われていたこともあるという逸話すら聞いたことがあります。曲がりなりにも血小板を研究していたことがある立場としては何だか複雑な気持ちでした。

血小板の主な役割は、皆様よくご存知の通り止血です。怪我をしたときなど、破損した血管壁に吸い寄せられるようにして集まって行き、コラーゲンやvon Willebrand(フォンウィルブランドと読みますが、今回は読み流してください(笑))因子を介してそこにペタペタとくっついて血管の穴をふさごうとします。したがって、血小板の数が少ない状態だと血が止まりづらくて手術はしづらいですし、日常生活を普通に送っていてもあちこちにアザが出来たりして大変です。逆に血小板の機能が何かしらの理由により亢進状態になると血が詰まる=血栓症のリスクにもつながるので繊細なバランスが重要です。

止血という有名な役割に少し近いところでは、血管壁の恒常性にかかわっているともされています。血管壁の恒常性とは何ぞや、と思われるかもしれませんが、血管壁のバリア機能の維持、とでも言うのでしょうか。要は血小板数が一定数以下になると、血管の壁にすき間が出来て血液が漏れ出てしまうということですね。日常生活を普通に送っていてもアザが出来ると上述しましたが、それはどこかにぶつけて青たんができる、ではなく何もしてなくてもアザが出来るということです。怖いですね。

その他に、近年では血小板が自然免疫にかかわっていることも示唆されるようになってきました。先日紹介した顆粒球と同様です。血小板が直接病原体にくっついたり破壊したり、炎症に参加したり。犬や猫だとそれらが実験的に証明されたことはないように思いますが、理論的には同様な現象が起こっているように感じています。

ここまで血小板のことを書いてきて、血小板ってやはり凄いなぁと我ながら感心していましたが、全然顕微鏡写真が少ないですね(笑

イヌ末梢血、対物レンズ100倍、Diff-Quik染色

ということで脈絡もなくまた血小板の写真です。写真上の紫色の細胞は全て血小板ですが、ちょっと大きな変な形の長いものも写真に収めてみました。写真をこんな公なところに挙げておきながら、これが何なのか、という質問に的確に答えられる自信はないのですが、幼若な血小板あるいは血小板の異形成とみています。

血小板は巨核球というとても大きな細胞のはしっこがぶつぶつとちぎれて出来上がっていくのですが、生産が追い付かずに慌てて血小板を造っているときや、そもそも遺伝的に血小板を造るのが上手ではない場合、このような通常とは異なる血小板が出来てきます。犬だとキャバリアやノーフォークテリア、ケアンテリアで血小板を造るのが上手でない子がいますが、日常生活でも、いざ止血機能を求められる時でも支障をきたさないとされているのでご安心下さいませ。あとは秋田犬の一部でも血小板がうまく造れない子がいると言われています。

さて、、以上です。なんだか盛り上がりに欠ける記事となってしまい、血小板に申し訳ない気持ちでいっぱいです。なんか、こう、役割的にもビジュアル的にも地味なんですよね(笑 まぁその地味さ加減に惹かれていった節もあるかもしれませんね。

季節柄、洗い物で手にあかぎれとかできてませんか?私は肌が弱いのであかぎれがしょっちゅうできます。あかぎれた手をじっとみて血小板に思いを馳せ、今日も止血してくれてありがとうと感謝する日々です(その前にハンドクリーム塗りましょう)。では、またお時間のある時にお付き合い頂ければ幸いです。