英論文紹介: 猫の急性輸血反応発生率とリスク因子

気付けば今年も残すところあと一ヶ月ですね。師走を走り切るための準備で霜月から既に走り回るような生活はいかがなものか、などと何とか締め切りを遅らせてもらう言い訳を考えながら、日々診療後に物書きに追われております。良い子に締め切りをちょっと遅らせてしまうくらいで頑張っていたら、クリスマスの頃にサンタさんは睡眠時間をくれるでしょうか…とか書いていたら今パソコンの前で気持ちよく20分意識を失っておりました。サンタさん仕事が早くていらっしゃる。ありがとうございます。今年もあともうひと息、頑張っていきましょう。

さて、今日は英論文紹介です。私が更新している日本獣医輸血研究会のホームページもあわせてご覧ください。今回紹介する論文のタイトルを見た時点でピンときている方がいたら相当鋭いですが、以前、同じタイトルで犬バージョンの論文を紹介したことがありました。同じ研究グループの方々が、猫でも同時期に症例を集めていたようで、猫の症例が一定数集まったことを機に論文化されたのだと思います。

今回の論文でも北米、イギリス、オーストラリアの二次診療施設が協力して輸血の副反応調査を行っており、犬のときはたったの8-9ヶ月くらいの間に犬858頭、血液製剤1,542検体も症例数を集めていたので驚きましたが、それに比べると猫は少しペースが遅くなっています。2年弱の間に猫444頭、血液製剤608検体です。それでもすごい症例数です。その猫たちに輸血を行い、どの程度、急性期に輸血反応が生じているのかということを調べた報告となります。

結果、赤血球製剤全体で7.8%の急性輸血反応が生じており、最も多くみられた輸血反応は発熱性非溶血性輸血反応の5.7%だったそうです。一方、最も警戒するべき急性溶血性輸血反応は0.06%(3例)しかみられなかったそうです。その3例はいずれも初回輸血であり、A/B抗原に基づいた血液型が一致していることは確認しているものの、2例はクロスマッチを行わずに輸血、1例はクロスマッチが全検体不適合でやむなく輸血を行った症例だったそうです。やむなく輸血を行うしかなかった1例は仕方ないにしても、クロスマッチを行わずに輸血している2例は日本人の感覚としては気になりますね。

欧米の方々は猫の初回輸血の際、A/B抗原に基づく血液型判定は行うものの、クロスマッチをスキップする傾向にあります。それは成書でも論文でも明記されているので知っていましたが、たとえば今回の論文では初回輸血の猫346頭中、クロスマッチを行ったのはわずか160頭(46.2%)だったそうです。2回目の輸血を行った猫は119頭いたそうですが、さすがに2回目なので106頭(89.1%)でクロスマッチを行ったとあります。まぁ確かに、全体で0.06%しか発生していない急性溶血性輸血反応を警戒するために、目くじらを立ててクロスマッチをやる必要もないじゃないかと言われればそれまでなのかもしれませんが。

ちなみに、全体で7例のクロスマッチ不適合判定の上で輸血を実施しており、急性溶血性輸血反応がみられたのはそのうち1例のみとのことで。そもそもクロスマッチの手技が気になるところでしたが、そこまでは詳しく記載されていませんでした。個人的にクロスマッチの手技について熱心に研究していた頃もありましたので、欧米でクロスマッチがないがしろにされている風潮はあまりいただけないんですよねぇ。

それはさておき、猫の輸血も犬と変わらず概ね安全に終えることができる、という報告は何よりでした。ここにきて犬猫の輸血関連の論文がどどっと出てきておりまして勉強になります。また来月もどうぞお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。