英論文紹介: 猫の初回輸血前のクロスマッチ

梅雨入り前にすっかり夏のような暑さの日が増えてきましたが、皆さまは変わりなくお過ごしでしょうか?

さて、唐突なタイトルで驚かれた方が多いことと思います。私、実は日本獣医輸血研究会のホームページ運営など広報活動に携わっておりまして、その一環として輸血に関する英語論文の抄録を日本語で紹介する企画を2019年から継続しています。

ところで、ここまで記事を書いていてふと思いましたが、なんで英語の論文をわざわざ紹介してるいるの?と思われた方々も多いですかね。それは単純な話で、分野にもよりますが欧米の獣医学の方が日本よりも進んでいるとされているからです。私が学生の頃は、欧米と比較して20年遅れていると言われていたように思います。20年前ですよ。今日家に帰ってテレビをつけたら、2002年のサッカー日韓ワールドカップが放送されていた、くらいの衝撃です。それでは動物の命を救うにあたり色々と不都合が多すぎるので、少しでも時差を埋めようとして欧米の獣医学の良いところを取り入れていく必要があるのです。

ホームページで紹介している内容は完全に獣医療従事者向けではありますが、毎回丹精込めて更新しておりますので、折角なので当院のブログでも紹介させて頂くこととしました。

今回は猫の初回輸血前にクロスマッチを行うべきかどうかについて検討した論文をこちらへ紹介しています。輸血を安全に行うための2大検査である血液型判定とクロスマッチ検査。その片方を省略してみたらどうだろうかという斬新な観点からの研究報告です。

結論としては、血液型判定をしっかりやっていれば概ね大丈夫そうという印象を受けましたが、心配性の私としては「概ね」で大丈夫なのかという疑問が残る結果でもありました。それに2種類のクロスマッチの手技を比較しているのですが、結果の乖離が多すぎてそれぞれの手技に問題がなかったかどうかも気になります。

今後の追試の研究結果が出たら話が変わる部分もあるかもしれませんので、当院では猫の初回輸血前も可能な限り血液型判定だけではなくクロスマッチも行っていこうと思いました。

以上です。マニアックな話で恐縮ですが、ご興味のある方がいらしたら、診察の際にご質問下さい。時間の許す限り、アツく語り合いたいと思います (笑