英論文紹介: 輸血後のPCVチェック
昨年の仕事納めの記事を12/31の18:10に投稿し、そのあと病院の戸締りをして帰ろうとした矢先、道路の排水溝に鍵がすってんころりんと吸い込まれて行き。消防とかどこかレスキュー的なところに連絡をしてなんか大掛かりな機械で排水溝の金属を外してもらわなければならないんだろうかこの大晦日に申し訳ない、、、とか頭の中に情報が色々駆け巡っていましたが、よく見てみると排水溝の蓋は手で外せるようになっており。あと数時間で2024年も終わろうとしているさなか、排水溝の蓋を外して道路に這いつくばりながら排水溝の中に全力で手を伸ばす私。家路を急ぐ通行人の方から見たら私はどう見ても不審者そのものでしたが、必死の攻防のおかげで無事に鍵を救出することが出来ました。顔に排水溝の苔が少し付いたり洋服のどこからともなく下水のニオイが漂っていましたが、119番して恥をかかずに済んで良かったです。まさか2024年の最後の最後にそんなネタが仕込まれていたとは神様もにくい演出をなさる。
さて、本日は毎月の英論文紹介の記事となります。私が更新している日本獣医輸血研究会のホームページもあわせてご覧下さい。医療と異なり獣医療では輸血用の血液を各自で調達する必要があるため、いざ輸血を行おうとするとその日はとても大変な1日となります。なので輸血が終わった後はそのまま帰りたくなる気持ちは分かりますが、輸血が予定通り無事に終わったことを調べるため、輸血効果の確認を行う必要があります。具体的には、赤血球の補充を目的とした輸血であれば、輸血後のヘマトクリット値などが事前の計算と比較して順調に増加しているかを血液検査で確認する訳です。
今回紹介している論文の中では、慣習的に輸血2時間後のPCVが輸血効果の確認時に採用されていることが書かれていましたが、例えば救急の場面だと輸血終了から2時間ものんびり待っていられないことも多くあります。筆者はそこに着目し、輸血終了直後~4時間後まで経時的に採血を行って、結果的にいずれのタイムポイントにおいてもPCVが安定して上昇していることを確認できたと示しています。すなわち、2時間も待たずして輸血終了直後でも輸血効果判定は充分できるよという結論なので、救急に限らず忙しい臨床現場においてはとても有益な情報です。たとえば15時から輸血が始まって19時過ぎに輸血が終わり、そこから2時間待って21時に輸血効果判定を行うのではなく、19時にもう血液検査をしてしまえばいい訳ですからね。
また、多くの場合、想定通りに輸血効果が得られていることを確認できる訳ですが、時折、輸血後のPCVが全く増えていないことも経験します。その場合、溶血性輸血反応を最も警戒しなければならない一方、輸血終了直後に採血したからいけなかったのかと疑心暗鬼になり、その後数時間おきに不必要に採血を繰り返すのは動物にとってもデメリットが多いです。些細なことかもしれませんが個人的にはだいぶ違う、臨床家の知りたかった疑問に応えてくれる良い内容の論文だと思いました。
私の排水溝に鍵を落とした体験談も、どなたかのお役に立てる良い情報提供になって下されば幸いです。ちなみに排水溝の蓋が外れることに気付くまでの間、針金をつなげて細長い釣り針みたいなのを作り、その先端で鍵をひっかけようとして頑張っていました。でもその案は暗がりだとあんまり上手くいかないのでおススメできません。排水溝の蓋を外して車に気を付けながら地面に這いつくばって手を伸ばして頑張るのが良いと思います。そもそも皆様におかれましては排水溝に鍵を落とさないようお気を付けくださいませ。