顕微鏡写真: 犬の火炎細胞

意外なことに普通の形質細胞のことを記事で特集していなかったことに気付いておきながら、今日はいきなりのFlame cellの話をしたいと思います。日本名は火炎細胞です。

とは言え一応、形質細胞について触れておきますと、形質細胞は免疫グロブリンを産生することに特化した細胞であり、リンパ球の一部が成長したものです。形態学的には好塩基性の青い細胞質、核が隅っこに寄って偏在していることや核の周りにゴルジ野と言って染色性が低下して淡色を呈することが特徴的です。

イヌ骨髄塗抹-形質細胞、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

この写真で言えば核の左側の少し染色性が薄くなっているところがゴルジ野、核周明庭(かくしゅうめいてい、と読むはず)とも呼ばれますが、形質細胞は免疫グロブリンを細胞内で産生して血液中に沢山放出しないといけないので、ゴルジ装置が発達している訳です。核の中の遺伝情報に基づいて粗面小胞体上でリボソームがタンパク合成してゴルジ装置でそれを糖鎖でラベリングして細胞外に放出して各所へ配達していく、、、みたいなことを大学受験のときに生物で勉強したような気がします。

今回紹介する火炎細胞は、この好塩基性の細胞質の一部がピンク色に染まっていて燃えているように見えるのでそう呼ばれています。

イヌ骨髄塗抹-火炎細胞、対物レンズ100倍、Diff-Quik染色

医学の方だとIgAと呼ばれる免疫グロブリンを分泌するタイプの骨髄腫のときによく見られるそうなので、骨髄腫でないにしても私は犬や猫でもこの火炎細胞を見かけたらIgAを頑張って作っているのかなぁと思っていました。しかし今回記事を作成するにあたり少し調べてみましたが、このピンク色の火炎はIgAですと断言している文章は意外と見当たらず、何なら医学の方ではIgGやIgM型の骨髄腫でもみられることはあるそうで。比較的多くみられるのはIgA型の骨髄腫みたいなんですけどね。

イヌ骨髄塗抹-火炎細胞、対物レンズ100倍、Wright-Giemsa染色

とにかくこの火炎細胞を見かけると、なんだかこの子(細胞)頑張っているんだなぁ、としみじみ感じることが多いので記事に取り上げてみました。最後まで読んで頂いている方には恐縮ですが、毎度のことながらこの細胞は見落としてはいけない重要所見だとか、何かの病気の診断に特異的なものではありません。火焔細胞とも書かれることがあり、ネーミングセンスに中二病心がくすぐられる。ただそれだけのために紹介してみたかったのです(笑