英論文紹介: 犬の輸血の有効性および副反応リスク
12/30のことを小晦日(こみそか、こつごもり)と呼ぶそうですが、先ほど少し外へ出てみたら洪福寺松原商店街は年末年始の買い出しの方々でごった返しておりました。私はと言えばまだ仕事納めをしていないので変わらず働いておりまして、昨夜も事務のトラブル処理に追われて帰宅は午前様でした。何事も計画的に進めていきたいところですが、どうしても診療を優先して事務は後回しになりがちです。頑張らないとですね。
さて、今月も英論文紹介を行いたいと思います。先月の猫に続いて、今月は犬の輸血の有効性と輸血反応リスク因子に関する研究です。私が更新している日本獣医輸血研究会のホームページもあわせてご覧ください。
今回の筆者たちはデンマークのコペンハーゲン大学附属動物病院の方々で、4年間で137頭の犬に対して輸血を行い、その有効性と副反応リスクについて評価しています。輸血を行う際、何とか輸血を無事に終わらせることで手いっぱいになり、輸血の有効性について客観的に評価することが疎かになる場面は少なくありません。
そこで、筆者たちは輸血の有効性について、あらかじめ臨床症状の改善および検査数値の改善として定義しておき、それらを満たした場合にその輸血が有効であったと評価しています。たとえば、貧血に対する輸血であれば呼吸状態や血圧の安定化、ヘマトクリット値の計算通りの上昇、止血異常に対する輸血であれば出血兆候の消失、PT/APTTの正常化などをもって有効性ありとしています。
結果、輸血をした症例の29.5%で充分に有効性ありと判定され、その他の23.7%も輸血前の計算を下回るもののある程度有効性が確認されたようです。一方、残念ながら9.4%は輸血の有効性が得られず輸血前と状態が変わらない、1.6%は輸血前より状態の悪化がみられたとあり、残りの35.8%は回顧的な研究だったので症例情報の詳細が不明だったとあります。よって、私の解釈では53.2%の症例が輸血により何かしらの改善がみられたものの、11.0%の症例は輸血による治療効果が得られなかったとみています。詳細不明な症例を除いて考えたら、大体6件に1件は輸血をしてもあまり上手くいかなかったということで、中々手厳しい結果です。
一方、輸血反応の合計件数がすこぶる多い訳ではないのですが、一般的に輸血反応で最もよくみられる発熱性非溶血性輸血反応の発生頻度はそれほど多くなく、一番警戒されるべき急性溶血性輸血反応が8%の症例でみられたとありました。約12件に1件の割合なので、体感的に多めな印象です。しかし免疫介在性溶血性貧血の症例に輸血を行うことが多かったので、溶血反応が輸血反応由来ではなく原疾患由来のものも含まれているかもしれない…いや、でも輸血前は血管内溶血してなかったからそんなこともないかも…と悩みながら考察されていました。
個人的には、筆者たちは欧米の方々だからきっと初回輸血だとクロスマッチしてないから急性溶血性輸血反応が多いのでは、と思って読んでいたら88.7%の症例でクロスマッチを行なったとあり…ふむ、結構行われてました。ただ難癖をつけるとしたら、基本的に行っていたクロスマッチの手技がrapid slide testと言って、スライドガラスの上で血液を混ぜて判定する方式なので、血球凝集の検出感度は試験管法と比べてやや低いのではと思いました。
まぁそれにしてもデンマークの大学附属動物病院は、輸血症例の20%以上が住血吸虫という感染症の症例だったということが最も驚きでした。日本には私の知る限りAngiostrongylus vasorumという住血吸虫は流行っていませんが、海外の文献だと定期的に見かけるんですよねぇ。止血異常を呈するらしく怖いですね。
以上です。本年は明日の午前診察をもって終了です。午後も早めに事務仕事を終えて、平和な大晦日の夜を過ごせると良いのですがはたして…


