英論文紹介: 輸血と感染症2

先月の花粉症を脱したと思ったらほんのり喉と鼻の風邪をひいてしまい、診療終了後の残業テンションが上がらないままボーっと安静に過ごしていたらもう月末になっていました。まぁ、風邪を引いていなくてもブログ更新はいつも月末ギリギリではありますが、、

さて、今月も英論文紹介から頑張っていきましょう。今月は犬の輸血と感染症に関する話題です。私が管理している日本獣医輸血研究会のホームページもあわせてごらん下さい。ちなみに2022年のブログでも輸血と感染症に関して取り上げており、その時はイタリアの研究チームからの報告でしたが、今回はカナダからの報告となります。

それぞれを比較してみると、イタリアの方ではドナー候補犬1260頭中、25.7%が少なくとも1種類の節足動物媒介性の病原体に対して陽性反応を示しており、最も陽性率が高かったものはLeishmania infantumの12.2%、その他はEhrlichia canisが2.3%、Anaplasma phagocythophilumが1.2%、Dirofilaria repensが1.0%、Dirofilaria immitisが0.3%、Babesia canisが0.2%であったそうです。

一方、カナダの方では、条件をPCRに限定してみると血液6,140検体中、1.1%においてAnaplasma phagocytophilum、Bartonella、Brucella canis、Candidatus Mycoplasma haematoparvum、Mycoplasma haemocanisのいずれかひとつあるいは複合感染が確認され、Babesia、Ehrlichia、Leishmaniaは1例もみられなかったとのことで。

ここまでの文章だけを見るとイタリアの方の病原体陽性反応率が高くて不思議に思われたかもしれません。しかしもう少し本文まで読んでいくと、イタリアのペルージャ大学というところからの報告なのですが、ペルージャはイタリアの真ん中部分に存在する歴史のある町のようでして。筆者たちいわく節足動物媒介性の感染症が蔓延している地域らしいのです。

そんな町から献血ドナー犬を探すにあたり、実際献血してもらう前に感染症スクリーニング検査を抗体検査(フィラリアはKnott法あるいはELISA)で行ったところ、上記のような陽性率が出てきたとのことで。筆者たちも考察で述べていましたが、抗体が陽性でも本当に病原体を現在も有しているのかは不明なので、正式にはPCRを行ったほうが良いと。抗体検査はSNAPなどの簡易キットを使えば院内でも判定できるものなので便利ですが、感染症蔓延地域だと悩ましいところです。

一方、カナダの方では、ドナー検査は潜り抜けて実際献血してもらった血液をPCRで検査して、1.1%の確率で病原体がみつかったということなんです。その血液は廃棄されたので、実際に病原体陽性血がレシピエント犬に投与されることはなかったそうですが。素晴らしい検査体制ですよね。

日本では公的な動物用血液バンクがないこともあり、献血してもらった後の血液を一定期間使わず保管して、その間に全検体検査するということは事実上不可能です。もし仮に動物用血液バンクが日本でも認められるようになっても、今度はそれだけを生業として暮らしていく獣医師や愛玩動物看護士、その他の職員が大勢いないと上記のような水準の検査は難しいので、資金の調達など中々道は険しいように思います。

5月に予定している日本獣医輸血研究会のシンポジウムでは、そのあたりのドナー検査のガイドラインの見直しについて議論が白熱する予定です。当日はパネリストとして参加する予定なので、今からしっかり勉強して自分の考えをまとめていきたいと思います。