顕微鏡写真: 猫の白血球のアポトーシス

今回は細胞死のなかでもアポトーシスに関する顕微鏡写真です。早速ご覧いただきましょう。

ネコ皮下腫瘤自壊-白血球のアポトーシス、対物レンズ100倍、Diff-Quik染色

この好塩基性の濃縮した粒々したものを含む細胞がアポトーシスをおこしている白血球です。強い好中球性炎症を生じている標本だったので、もととなる細胞はおそらく好中球かなと思いますが、ここまで細胞形態が変化していると私には何とも言い難いですね。

細胞死というと代表的にはネクローシスとアポトーシスがあり、ネクローシスは壊死とも言います。外傷や感染など細胞の外的な要因により急性の障害をおこし、事故的に細胞死を迎えるのがネクローシスです。細胞が膨化し、そのまま制御できなくなると細胞膜が破裂して細胞内容物を周囲に漏らすので、炎症をおこすとされています。

一方、今回写真でお示ししたアポトーシスはプログラム細胞死のひとつであり、役割を終えた細胞が計画的に細胞死を迎えることを指します。有名なところでは、オタマジャクシがカエルになる過程で尻尾が消えていくのも、アポトーシスによるものとされています。ちなみにアポトーシス(Apoptosis)はギリシャ語で木から葉が落ちるという意味の単語が語源になっているそうです。

アポトーシスでは核や細胞質の断片化がおこりますが、細胞膜に包まれた状態でアポトーシス小体という小さな凝集体を形成し、それを貪食細胞が片付けるため、ネクローシスのように細胞内容物が漏出して周囲に炎症や障害を引き起こすということはありません。ただしアポトーシスは体内で計画的に行われる必要があるので、制御が効かなくなり過剰にアポトーシスを起こすと萎縮を生じたり、不足すると過剰な細胞増殖により悪性腫瘍の発生につながることもあります。

アポトーシスをおこしている白血球は血液塗抹でもたまにみかけることがあります。強い炎症をおこしているときなどですね。人間の体内では毎日500~700億個の細胞がアポトーシスを起こしているそうなので生命って不思議ですねぇ。見た目がきらきらと綺麗に感じるのでやはりお気に入りの細胞なのですが、上述したような体内での緻密なコントロールの結果、生じているものだと思うと感慨深いものがあります。さて今夜も良き時間となりましたので、アポトーシスに思いを馳せながらそろそろ黒甜郷裏へ旅立とうと思います。