英論文紹介: 献血ドナー犬の合併症調査
ゴールデンウィークも過ぎ去りもう5月も終わろうとしていますね。先日は日本獣医輸血研究会の学術講習会にて、ドナーガイドラインの見直しについて3時間に渡るシンポジウムに登壇者のひとりとして参加してきました。前もって仕込んだ謹製のスライドショーがある訳でもなし、3時間も人前で何を話すのかと心配していたところもありましたが、終わってしまえばあっという間の3時間でした。それだけ、ドナーとなる犬や猫の適応基準について各自思うところがあるのだなと感じて勉強になりました。ぜひ、今回のシンポジウムを基に日本獣医輸血研究会の献血指針アップデートを発表していきたいですね。微力ながら私もお手伝いさせていただこうと思います。
さて、今日も英論文紹介をしていきたいと思います。私が更新している日本獣医輸血研究会のホームページもあわせてご覧ください。今回は献血ドナー犬の合併症に関する調査報告です。以前、猫のドナーの合併症に関する調査報告を紹介したことがあったので、すっかり犬のドナーに関する報告も紹介済みだと勘違いしていました。今回は猫の時と同じポルトガルの動物用血液バンクの他、スペインの動物用血液バンクも協力してデータを取った報告です。
それこそドナー犬になれる条件としては、①臨床症状がなく健康であること、②性質が穏やかであること、③体重25kg以上、④年齢1-10歳、⑤妊娠あるいは授乳中でないこと、⑥定期的な予防接種を受けていること、⑦ノミや消化管寄生虫を予防していること、⑧投薬中でないこと、⑨心雑音が無いこと、⑩身体検査異常がないこと、⑪輸血歴がないことを挙げています。人間の献血と同じように、献血時には術前の血液検査が含まれていないことが特徴的ですね。献血の時に初流血を確保しておいて、後から感染症スクリーニング検査や血算、生化学検査に回しているようです。
だから献血場所は動物用血液バンクや提携の動物病院だけでなく、飼い主の住居にお邪魔して採血することもあったようです。上記①-⑪の条件なら特殊な血液検査機器が無い場所でも採血できますからね。そのおかげでドナー犬のハードルが低いのか、1年の間にドナー犬2,776頭に協力してもらって献血回数はなんと合計4,439件という相変わらずの献血件数の多さです。年間300日稼働するとしたら1日約15件献血してもらわないと間に合いません。
その一方、合併症の発生頻度は37件(0.83%)と低頻度に抑えられていて目を見張るものがあります。また、合併症の発生頻度が低いだけではなく、確認できた合併症は採血部の血腫が28件(0.63%)、止血後の軽度な再出血が5件(0.11%)、剃毛部の皮膚炎が2件(0.045%)、と言うように軽症例が大半を占めています。可視粘膜蒼白など献血後の血圧低下を示唆するような臨床症状も2件(0.045%)みられたようですが、生理食塩水のボーラス投与などその場の処置で改善させることができています。安全性の高い献血体制が構築されており、非常に素晴らしいと感じます。
以上です。ちなみに、血液はドナーの体重に合わせて450-550mL(15mL/kgは超えない範囲)採取したようですが、2,776頭もいて鎮静処置を1頭も行わなかったというのにも驚かされました。25kgを超える大型犬がひとたび暴れたら採血どころではないですし、本人は少し動いたつもりでも、体が大きい分、針先がずれて血腫を作るリスクも高まります。ポルトガルとスペインの犬は穏やかにしつけられている子が多いのだろうか。凄いなぁ。
しかし何でポルトガルとスペインの共同研究なのだろうと思って地図を眺めてみたら、この2国は隣国なのですね。今回の動物用血液バンクの拠点があるポルトとバルセロナは陸続きで、東京-鹿児島間くらいの距離のようです。自分の無知を痛感しました。私も合併症の少ない献血採血を心掛けるようにして日々精進していきたいと思います。


