英論文紹介: 犬の献血バスの運用

気付けば今日で4月も最終日。ほんのり汗ばむ陽気の日もありますが、雨が降ったり花冷えのする日があったりと、日替わりな天候についていけず胃腸症状や皮膚症状のご相談も少なくない今日この頃です。私は倦怠感はあるものの健やかに過ごせていますが、人も動物もしっかり栄養と休息を取って体調管理に気を付けていきましょう。さて、今月も英論文紹介をしていきたいと思います。私が管理している日本獣医輸血研究会のホームページも良ければあわせてご覧ください。

今回紹介しているのは犬の献血バスの運用に関する報告で、韓国のチームが発表しています。人の献血バスは商業施設、大学、駅前などで定期的に運行しているのを見かけますが、献血ルームまで中々足を運ぶ機会が無い方に向けて、現場へ直接出向いてくれる移動出張所として非常に高い有用性を持っています。私はまだ献血バスで献血をしたことが無いのですが、献血ルームと同じように問診、血圧測定、血液検査、採血という流れで人の方では献血が行われるそうです。休憩時間も含めて所要時間は1時間弱ということのようで。

犬においても、いざ献血してみようという気持ちはあっても、動物病院まで足を運ぶのが大変だったり、そもそも動物病院では献血を専門に行っている訳ではないので、他の診療と並行して行うような形では時間がかかってしまうこともあるかもしれません。だから、ふと時間があるから献血してみようと思いついたときに献血できる訳ではないことがほとんどだと思います。そこで筆者たちは、犬版の献血バスを作製して献血キャンペーンを行ってみようと考えてみたわけです。

ベースとなる車両は、韓国なのでヒュンダイのソラティ(H350)というものを使用しています。日本だとあんまりみかけない形の車ですが、トヨタのハイエースより一回り大きな車両みたいで、大きいモデルの方だと全長6,195mm、全幅2,038mm、全高2,690mmという記載を見かけました。カスタム車両は論文に図が示されていましたが、車両前方を検査室、後方を採血室としてしつらえてあります。検査室には自動血球計数器と生化学検査用の機械とあと冷蔵庫などが置いてあるように示してありました。採血室には診察台はもちろんですが、自動で計量と混和をしてくれる採血装置も導入していたみたいで羨ましい限りです。私もいつか採血装置使ってみたい。

この研究チームにおける運用では、犬版の献血バスも問診から始まって検査、採血、その後の経過観察と進んでいき、所要時間は1時間半くらいで出来ていたようです。ちなみに採血時間は12分間くらい。ほぼ人の献血バスと同じくらいの感覚でしょうか。実際に採血まで進んだドナー犬40頭のうち2頭が採血ライン内の血液凝固により採血中止となってしまったようですが、それでも95%のドナーからは採血できています。目立った合併症はほとんどなく、採血部の剃毛によりバリカン負けが1頭でみられたと。献血に協力して下さったご家族からも、9割以上の方から高評価をいただいている様子で。大変素晴らしい結果ですね。

日本だとどんな車両になるのかなぁと勝手に考えてみましたが、ハイエースだと少し狭いかもしれないので、よく温泉旅館とかの送迎で使われるようなマイクロバスがベースになるのかなぁと思いました。私はあまり詳しくありませんが、三菱ふそうのローザや日野自動車のリエッセⅡという車両があるようですね。それらの車両をベースに上記のような室内空間のカスタムをして、血液検査の機械や診察台を置いて、せっかくだから自動採血装置と血液バッグのシーラーも欲しいし。車体にもやっぱりデザイナーさんにお願いして素敵なボディラッピングを施して。さてさて電卓を叩いてみると、えーっと、ざっと2,000万円あれば良い感じの犬版の献血バスが作れそうですね。た、たかい。

日本も大きな企業系動物病院であればそれくらいの設備投資はできると思いますが、大学だとちょっと厳しそうだなぁ。この韓国の建国大学のチームはいったいどうやってそのお金を工面したのだろうか。もしかしたらヒュンダイさんから車両を無償提供してもらったり、血液検査機器もメーカーさんが無償提供してくれたのかもしれませんね。少なくとも猫の額ほどの広さで爪に火を点すようなスタイルの当院ではちょっと導入が難しそうな設備なので、そっと論文を閉じて本日は終了したいと思います。